ホノルル市救急車同乗実習
2019年3月13日(水)、14日(木)の2日間 Honolulu Emergency Service Department とのアポイントメントが取れ、学生7名、教員1名で救急車同乗実習を行ってきました。
現在日本での救急業務は平成3年に法制化され平成4年から米国パラメディックを目指し運用が開始され現在に至っています。しかしながらバックグラウンドの違いから使用薬剤および資器材、プロトコール、勤務体制などあらゆる面での相違から日本式の救急体制となっています。それがダメだということでありませんが先人の「賢者は歴史に学ぶ」と言う言葉に乗って、この機会に日本が目指した救急を見てみようということになりました。
実習日程
- 3月13日(水)9時?12時
講義 ホノルル市の救急の歴史に始まり、あらかじめ送付した19項目の質疑応答と施設、薬剤、消耗品の管理などを見学。 - 3月14日(木)12時?20時
同乗実習 ホノルル市内3カ所の救急ステーション救急車4台、1カ所の消防施設に付随するステーション救急車1台の計4カ所5台の救急車両に8名が配置され、それぞれ同乗実習(8時間で41件)を行いました。その際、消防署(ワイキキ#7ステーション)見学も実施。 - 3月15日(金)自由時間
最後は皆でワイキキ、ノースショアでそれぞれサーフィンに興じライフセーバーの活動を海上から見学…。(もちろん昨日のことを話し合うなどデフュージングは忘れません)
19の質問のうちパラメディックの資質についての回答
- Quick Thinker 頭の回転の良い人
- Observant to Details 細かいところに気づく人
- Understanding 理解すること
- Good Listener 聞き上手であること
- Assertive 主張すること
- Desire to Help Other 人を助けたいと願うこと
「人を助けたいと願うこと」は本学の目指しているところでもあります。この言葉を真摯に受け止め今後の教育の糧としたいところです。
今回同乗研修を受講した学生は将来救急救命士として日本のプレホスピタルケアを担う重要な人材です。この経験を生かしさらに世界に目を向けたグローバルな救急救命士になってもらえればと来年も同乗実習が出来るよう関係を維持していきたいと願っております。
終わりに今回の実習を実現に学長、局長、国際交流室 平禅課長ほか皆様の御厚意と受け入れていただいたKorey Chock氏に心より感謝いたします。
文責 黒木尚長
ハワイ学生レポート
参加動機
初めは先輩から誘われてこのような機会があることを知った。参加する動機としては学生のうちに海外に行っていろいろな経験をしてみたいと思ったため。また、海外の消防、救命士にも興味があり自分の目で見てみたいということもあり参加した。
救急車同乗の準備
準備としては、英語の医療用語を覚えた。また、アメリカのパラメディックのことをネットで調べてみたりした。例えば、どのような医療行為ができるのか、使用できる薬剤の種類や数など。アメリカのパラメディックのことばかりではなく日本の救命士のことも勉強しておけばいろいろと比較できたと思うので勉強しておけば良かったと思っている。ボイストラのインストール。
件数と事例
- 40歳男性 現場:道路
バイタル
血圧 116/75 脈拍 100 Spo? 96 血糖値 43
現場到着時消防と警察が対応していた。顔に軽い傷があった。酔っており、泣いていた。血糖値が低いため静脈路確保してブドウ糖を投与しようとしたが、左撓側皮静脈で失敗、次に右手背静脈で失敗したため断念。糖の入ったチューブで経口摂取させていた。 - 8~10歳男性 現場:学校
過呼吸がみられた。CO?濃度低下。鼻カニューレを使用。初めての症状。パラメディックによると喘鳴がなかったので喘息ではない。 - 78歳男性 現場:自宅
現場到着時消防が先に対応していた。めまい、吐き気の症状があったが到着した時には症状が治まっていた。そのため搬送はなし。 - 66歳女性 現場:ビーチ
バイタル(薬剤投与後) 投与前は車内に入れなかったため不明
血圧208/130 脈拍103 Spo?93 CO?濃度47 意識なし
海で溺れた。CPAと通報。到着時ライフガードがCPRを2サイクルやったところで心拍再開と報告。死戦期呼吸のような異常な呼吸がみられた。Fentanyl Citrateを投与後気管挿管をしていた。BVMで消防士が喚起しながらパラメディックがたまに水を吸引しながら搬送した。心電図は2誘導でST上昇なような波形がみられた。 - 年齢は聞き取れなかったがおそらく80代男性 現場:老人ホーム
バイタル
血圧182/62→166/73 脈拍80→60 Spo?99 血糖値114
転んだと通報、左骨盤付近に痛みを訴える。左足が右足と比べ長く外側を向いていた。そのため、パラメディックは骨盤骨折を疑っていた。左橈骨皮静脈で静脈路確保した後に搬送。 - 70代男性 現場:自宅
到着時トイレで倒れていた。車いす生活で誤って倒れたようだった。本人が搬送を拒否したので搬送はなし。 - 18歳女性
バイタル
血圧113/68→99/42 脈拍124
マリファナを食べたと通報。現場には嘔吐物があった。意識は朦朧としていて目は閉じているが会話はできる。すべてがスローに見えたと話していた。処置は特に何もなく搬送。
乗った感想
乗って始めに思ったことは現場に向かう時や到着した時に思っている以上にゆっくりしていることだった。日本でもそうなのかもしれないが、救急車に同乗したのが今回初めてだったので驚いた。また、現場には消防や警察がいることが多く、連携がスムーズに感じた。患者への対応ばかりに目がいってしまい、家族への対応の仕方や現場での滞在
時間など他にも注目するべき点があったと思うが同乗中はそれらのことに気づくことができなかった。そのため同乗する前にどういうところに注目すればよいか事前に考えておくべきだったと思う。
経験をどう生かすか
とりあえずは、就職するための引き出しとして面接や小論文などで生かしていきたい。そのためにも今のままでは知識不足なので多くのことを学んでいきたい。また、就職後には今回のことを生かして救命率をあげるために論文を書いたり貢献していきたい。
R17M057平間拓巳